特定技能の在留資格を持つ外国人は、日本人労働者と同様に自己都合での退職が可能です。
特定技能外国人が退職する際は、雇用していた企業側と退職を申し出た外国人側、それぞれで手続きが必要となります。
企業では業務の引き継ぎや新たな人材の確保、外国人側は転職活動などで慌ただしくなりますが、手続きには期限が設けられているため早めに対応するようにしましょう。
本記事では、特定技能外国人の自己都合退職時に、雇用側・外国人側で必要となる手続きを解説します。
目次
特定技能の外国人が自己都合退職する場合の手続き
特定技能外国人が自己都合退職する際は、外国人本人だけでなく、雇用企業側でも必要な手続きを期限までに進めなければなりません。
後々のトラブルを防ぐためにも、手続きの内容はあらかじめ把握しておきましょう。
雇用側
特定技能外国人の自己都合退職後、雇用企業側では、入管(出入国在留管理庁)への書類提出と保険関係の手続きを行います。
特に、入管への書類提出を怠った場合、特定技能外国人を一定期間雇用できなくなってしまう可能性もあるため、期限内に手続きを済ませることが大切です。
入管へ書類提出
特定技能外国人の自己都合退職者が出た企業は、事業所を管轄する入管へ、3種類の書類を提出する必要があります。
- 受入れ困難に係る届出書
- 受入れ困難となるに至った経緯に係る説明書
- 特定技能雇用契約の終了又は締結に係る届出書
「受入れ困難に係る届出書」と「受入れ困難となるに至った経緯に係る説明書」は、特定技能外国人の退職が決まった日から14日以内に提出する書類です。
退職日から14日以内ではなく、外国人本人から退職の申し出があった日から起算する点に注意してください。
一方の「特定技能雇用契約の終了又は締結に係る届出書」は、退職日(雇用契約が終了した日)から14日以内に提出します。
さらに登録支援機関へ特定技能外国人の支援を委託している企業では、支援対象者が退職によりいなくなった場合、「支援委託契約の終了又は締結に係る届出書」の提出も必要です。
こちらは、支援委託契約の終了日から14日以内に提出しましょう。
保険関係の手続き
特定技能外国人が雇用保険に加入している場合、雇用企業は退職日の翌日から数えて10日以内に「雇用保険被保険者資格喪失届」をハローワークへ提出します。
雇用保険の被保険者ではないときには、「外国人雇用状況届出書」を離職した翌月の末日までにハローワークへ提出してください。
特定技能外国人が持っていた健康保険証は、退職後5日以内に健康保険組合に返却します。
同じく退職後5日以内に「健康保険・厚生年金保険被保険者資格喪失届」を年金事務所へ提出する必要があるため、健康保険証の返却と同じタイミングで送付を済ませると良いでしょう。
外国人材側
自己都合退職をした特定技能外国人本人は、「所属(契約)機関に関する届出」を提出する必要があります。
雇用企業との契約が終了した日から14日以内に、外国人本人が入管に届け出を行わなければなりません。
届け出を怠った場合、在留変更申請時の審査が不利になる可能性もあるため注意が必要です。
なお、雇用保険への加入期間が離職の日以前2年間に12ヵ月以上あれば、外国人も失業保険を受け取れます。
詳しくは、ハローワークの窓口などで確認してみてください。
特定技能の外国人が自己都合退職する場合の注意点
特定技能外国人が自己都合退職した際の手続きをスムーズに進めるためには、以下4つの注意点を念頭に置いておきましょう。
- 手続きによって期限が異なる
- 行方不明になった場合にも届け出が必要
- 自己都合退職の場合はアルバイトができない
- 一時帰国の場合は対応が異なる
適切な手続きを行わなかった場合、雇用企業・外国人材ともに罰則の対象となります。
手続きの期限や書類の不備不足には、十分気をつけましょう。
手続きの期限が書類によって異なる
前述したとおり、特定技能外国人が自己都合退職する場合は、雇用企業・外国人材のどちらも入管に対して書類を提出しなければならず、それぞれに期限があります。
特に、企業が提出すべき書類のうち、受入れ困難に係る届出書は実際の退職日から14日以内ではなく、退職事由が発生してから14日以内となるため注意が必要です。
また、受入れ困難に係る届出書に限らず、入管に対して虚偽の申告をしたり、書類提出を怠ったりすると、雇用企業は30万円以下の罰金が科される可能性があります。
期限を守り、適切に手続きを進めるよう徹底しましょう。
行方不明になった場合には届け出が必要
特定技能外国人が行方不明になった場合、退職の申し出が明確にされるわけではないものの、自己都合退職と同様に「受入れ困難に係る届出書」の提出が求められています。
退職事由の発生日は、行方不明が判明した日や連絡がつかなくなった日としましょう。
ただし、雇用企業側の過失により人材が失踪したと見なされたときには、以後1年間、新たに特定技能外国人を雇用できなくなります。
法令違反をわかっていながら雇用契約を結ばせたような悪質なケースでは、5年間受け入れが認められません。
さらに、雇用企業の過失による退職者や行方不明者の発覚後は、ほかに雇用を継続している特定技能外国人も退職させ、転職をサポートする必要があります。
退職や行方不明を極力発生させないよう、法令を遵守するとともに、外国人材が働きやすい環境を整備しましょう。
自己都合退職の場合はアルバイトができない
特定技能外国人が自己都合退職してから転職が決まるまでのあいだ、アルバイトとして働くことは認められていません。
特定技能の在留資格は、正社員での雇用を前提としているためです。
ただし、会社都合退職の場合は、アルバイトをするための資格外活動許可を得られるため、正社員以外での雇用も可能となります。
外国人材を受け入れている企業側でも、在留資格や退職理由によって雇用形態に制限があることを把握しておきましょう。
一時帰国の場合は対応が異なる
特定技能外国人が一時帰国を目的として退職を希望している場合は、支援委託契約が継続されるか否かで、雇用企業側に必要な手続きが変わります。
登録支援機関とのあいだで結んだ支援委託契約が終了する場合は、「支援委託契約の終了又は締結に係る届出書」を提出しなければなりません。
支援委託契約は結んだままにし、一時帰国を終えた特定技能外国人を再度雇用して支援委託を再開するのであれば、「支援委託契約の終了又は締結に係る届出書」は不要です。
特定技能外国人の自己都合退職時の対応を把握しよう
特定技能外国人が自己都合退職する際は、雇用企業と外国人材の双方で異なる手続きを進める必要があります。
雇用企業に求められるのは、入管に対する書類提出と保険関係の手続きです。
一方の外国人材は、入管への書類提出とともに、要件を満たすケースでは失業保険の手続きも忘れず行うようにしましょう。
なかでも入管に対して虚偽の申告をしたり、手続きをせずに放っておいたりした場合、ペナルティの対象となりかねません。
思わぬトラブルを防ぐためにも、企業は自己都合退職者が発生したときの正しい対応を把握したうえで、日頃から適切な雇用を心がけましょう。