外国人を日本の企業で受け入れる際は、入管法などの各種法令に則り、適切な手順で雇用しなければなりません。
なかでも外国人の就労ビザ(在留資格)は、雇用可否を左右する重要な要素です。
就労ビザなしの外国人でも雇用できるケースはあるものの、万が一適切な在留資格を持たない人材を働かせてしまった場合、企業側も罪を問われるため注意しましょう。
本記事では、就労ビザのない外国人の雇用可否や、本来雇用できない外国人を就労させてしまった企業が受ける罰則について解説します。
目次
就労ビザのない外国人を雇用できる?
外国人労働者を雇用する際は、その人材が適切な在留資格を取得している必要があります。
就労が認められた在留資格を就労ビザと呼ぶこともありますが、就労ビザを持たない外国人だからといって、必ずしも日本で働けないわけではありません。
就労ビザなしの外国人は原則雇用ができないこと、それと同時に例外もあることを理解しておきましょう。
ここからは、「雇用が原則認められない在留資格」と「就労ビザには該当しないものの雇用が可能な在留資格」をそれぞれ解説します。
保有していても雇用できないビザ
外国人が日本に滞在するためには、在留資格が必要です。
在留資格には、医療や教育、技術・人文知識・国際業務などの日本で働くことを目的とした就労ビザ以外にも、いくつかの種類があります。
そのうち、以下3種類のビザを持つ外国人は、就労以外の目的で日本に滞在しており、原則として雇用ができません。
- 文化活動
- 留学
- 家族滞在
これらの3つの在留資格には、次のような活動内容が定められています。
在留資格 | 活動内容 |
文化活動 | 収入をともなわない学術上、芸術上の活動 |
留学 | 日本国内の学校において教育を受ける活動 |
家族滞在 | 在留外国人の扶養を受ける配偶者または子どもの日常的な活動 |
上記のビザで日本に滞在する外国人は、基本的に雇用できませんが、資格外活動の許可を得ている場合は例外です。
資格外活動許可の申請を行っていれば、就労不可の在留資格を持つ外国人でも、一定の範囲内でパート・アルバイトなどの収入を得る活動が認められます。
就労ビザではないが雇用できるビザ
就労ビザに該当しない在留資格のなかでも、次にあてはまる外国人は、日本の企業で雇用しても問題ありません。
- 永住者
- 日本人の配偶者など
- 永住者の配偶者など
- 定住者
これらの在留資格を持つ外国人は、日本国内での活動に制限がなく、どのような業種でも就労が可能です。
日本人労働者と同じように働いてもらえるため、企業側としても採用の幅が広がります。
永住者には在留期間の制限がなく、その他の在留資格も要件を満たせば永住権を得られることから、中長期的なキャリア形成も期待できるでしょう。
就労ビザのない外国人を雇用した場合の罰則
就労ビザをはじめとした適切な在留資格を持たない外国人を雇用した場合、違法行為と見なされ、罰則が科される可能性があります。
雇用した企業側と外国人の双方が罰則の対象となりうるため、就労させても問題のない人材か、雇用前にきちんと確認しておくことが大切です。
雇用主・外国人労働者それぞれが科される罰則には、次のようなものが挙げられます。
対象者 | 罰則内容 |
雇用主 | ● 不法就労助長罪 ○ 3年以下の懲役、または300万以下の罰金 ● 営利目的在留資格等不正取得助長罪 ○ 3年以下の懲役、または300万以下の罰金 |
外国人労働者 | ● 資格外活動の罰 ○ 非専従資格外活動者:1年以下の懲役や禁錮、または200万円以下の罰金 ○ 専従資格外活動者:3年以下の懲役や禁錮、または300万円以下の罰金 ● 強制退去 ○ 一定期間の再入国禁止 |
就労ビザがない外国人労働者の雇用をしないよう気をつけよう
外国人労働者の雇用は、人材獲得とともに社内のグローバル化にも貢献するなど、企業にとってさまざまなメリットをもたらします。
一方で、就労ビザをはじめとした在留資格の確認が必須となり、適切な人材を受け入れなければ法律違反ともなりかねません。
具体的には、文化活動、留学、家族滞在の在留資格を持つ外国人は、原則として就労が認められず、パート・アルバイトなどで雇用するには資格外活動許可が必要です。
これに対し、永住者や日本人・永住者の配偶者、定住者に該当する外国人は就労ビザなしでも雇用でき、日本人労働者と同じように働いてもらえます。
適切な在留資格を持たない外国人を就労させてしまった場合、雇用企業・外国人ともに罰則の対象です。
懲役刑や罰金が科されるだけでなく、企業の信用にも関わってくるため、違法な雇用を避けるためにも外国人の在留資格は慎重に確認する必要があります。
各種法令を遵守しながら、外国人が安全に働ける環境をめざしましょう。