外国人労働者の受け入れを進めるにあたって、在留資格の確認は必要不可欠な工程です。
適切な在留資格を持たない外国人を雇用してしまった場合、法的なトラブルに巻き込まれる可能性があるほか、企業のイメージダウンにもつながりかねません。
違法性のない安全な雇用を徹底し、人材獲得や社内のグローバル化に外国人の力を役立てましょう。
本記事では、外国人雇用にあたって在留資格を確認する重要性や確認すべきポイント、注意点などを解説します。
目次
在留資格の確認の必要性
外国人の採用時には、在留資格の確認が欠かせません。
在留資格の種類によっては、日本での就労が認められないケースもあるためです。
例えば、就労制限がなく自由に働ける在留資格には、永住者や日本人・永住者の配偶者、あるいは定住者などがあります。
これに対し、就労可能ではあるものの、在留資格によって職種・業務内容が定められているのが、技術や人文知識・国際業務、企業内転勤、技術などのいわゆる「就労ビザ」です。
家族滞在や留学の在留資格は、基本的に就労できません。
これらの在留資格の違いを確認せず、不適切な外国人雇用を行った場合、企業は不法就労助長罪に問われ3年以下の懲役、または300万円以下の罰金が科される可能性があります。
法令遵守のためにも、採用活動時点で外国人の在留資格を把握しておくことが重要です。
在留資格で確認すべき5つのポイント
外国人の雇用にあたっては、以下5つのポイントを在留資格で確認する必要があります。
- 本人かどうかを確認
- 在留期間を確認
- 就労可否を確認
- 在留資格に該当する活動内容を確認
- 資格外活動の可否
これらは、雇用しても問題のない外国人かどうかを判断するうえで欠かせない情報です。
在留カードの情報がすべてではなく、場合によっては指定書などの確認もあわせて必要になるため注意しましょう。
本人かどうかを確認
第一に、外国人の在留カードがそもそも本人のものであることを確認します。
在留カードに記載された氏名と顔写真を照合し、提示した外国人が本当にカードの所有者であるかどうかを判断しましょう。
偽造カードや他人名義のカードを不正使用しているリスクも考慮したうえで、慎重な確認が求められます。
必要に応じて、本物の在留カードの画像などと照らし合わせながら、文字色や写真に不自然な点がないかをチェックしてみてください。
在留期間を確認
本人確認が済んだら、次に在留期間を確認します。
在留カードには、外国人本人が日本に在留できる期限が記載されており、その日付を過ぎている場合、不法滞在の可能性が高いといえるでしょう。
在留期間の定めがなく、なおかつ就労が認められているのは、永住者と高度専門職2号の在留資格のみです。
期間の更新を行わず期限が切れた在留カードを持つ外国人は、就労が認められないばかりか強制退去の対象となるリスクもあり、企業も責任を問われかねません。
外国人の雇用後は、企業側でも期限内に更新を行うよう管理するとともに、必要に応じて手続きをサポートできると安心です。
就労可否を確認
在留カードには、就労制限の有無が記載された項目があるため、この欄も忘れず確認しましょう。
「就労不可」とある場合、その外国人は雇用できません。
制限の範囲内で就労が認められるのは、在留カードに次の記載がある場合です。
- 在留資格に基づく就労活動のみ可
- 指定書記載機関での在留資格に基づく就労活動のみ可
- 指定書により指定された就労活動のみ可
就労制限の有無は在留資格によって異なるため、在留カードを所持しているからといって、必ずしも雇用可能な外国人とは限りません。
企業側が就労制限について知らず、悪意なく外国人の不法就労を招いてしまったとしても、罰則の対象となることを理解しておきましょう。
在留資格に該当する活動内容を確認
在留資格のほとんどは、就労できる職種・業務内容に制限があり、自社で任せたい業務と雇用する外国人の在留資格が適合している必要があります。
在留資格は、2024年7月現在で27種類存在しますが、日本人と同じように制限なく働けるのは以下4種類のみです。
- 永住者
- 定住者
- 日本人の配偶者など
- 永住者の配偶者など
技術・人文知識・国際業務をはじめとした就労を目的とした在留資格は、その分野と実際の業務に関連性があるかどうかが問われます。
仮に、技術・人文知識・国際業務の在留資格を所持した外国人であれば、エンジニアや語学教師などで活躍できる一方、分野の関連性が薄い介護士としては働けません。
在留資格によって活動範囲は異なるため、在留カードや指定書と実際の業務内容を照らし合わせて、雇用可否を判断しましょう。
資格外活動の可否
留学や家族滞在の在留資格を持つ外国人は、基本的に就労できませんが、資格外活動の許可を得ている場合には週28時間の範囲内で就労が可能です。
制限時間を超えて就労してしまうと、在留資格で定められた本来の活動に支障をきたし、不法就労と見なされかねません。
なお、資格外活動許可を得た留学生を雇用する場合、学校の長期休み期間中は1日8時間まで働いてもらうことが可能です。
上記をふまえて、在留カード裏面の「資格外活動許可欄」や許可書の確認とともに、雇用後には勤務時間の管理を徹底しましょう。
在留資格を確認するときの注意点
外国人の在留資格を確認する際は、以下3つの注意点を念頭に置いておきましょう。
- 携帯カードが原本であるか確認する
- 取り扱いの際には個人情報に配慮する
- 偽造カードを発見した場合の対応を確認する
在留カードにただ目を通せば良いというわけではなく、トラブルの原因を見逃さない正確性と外国人への配慮が求められます。
携帯カードが原本であるか確認する
外国人の在留資格を確認する際、在留カードは原本であることが大前提です。
コピーや写真データで提示された在留カードでは、偽造や改ざんを判断できません。
万が一偽造カードを信用して就労させてしまった場合、企業側も入管法違反に問われる可能性があります。
在留カードが原本かどうかを判断するには、カードの質感や特殊な印刷、ホログラムなどの偽造防止加工に着目してみてください。
出入国在留管理庁が配布している「在留カード等読取アプリケーション」を使うと、在留カードの偽造を確認しやすくなるため、必要に応じて活用すると良いでしょう。
取り扱いの際には個人情報に配慮する
在留カードには、外国人本人の個人情報が多く記載されています。
在留資格を持つ外国人にも、日本の個人情報保護法は適用されるため、情報の取り扱いに十分な配慮が必要です。
採用活動にあたって、外国人に在留カードなどの提示を求める際は、必ず本人の同意を得るようにしましょう。
また、取得した情報を本人の同意なく第三者に開示する事態は避けなければなりません。
情報管理には細心の注意を払い、必要最小限の項目のみを記録するなど、プライバシー保護に努めることで、雇用人材との信頼関係構築にもつながります。
偽造カードを発見した場合の対応を確認する
外国人の在留資格を確認するなかで、万が一偽造カードを発見したら、地方出入国在留管理局へ連絡しましょう。
窓口へ直接訪問するほか、電話、メールなどでの連絡も可能です。
偽造カードのコピーをとって証拠を記録しておくと、管理局も対応しやすくなります。
在留資格の確認は企業を守るためにも必要
企業が外国人の在留資格を確認する目的は、単なる身分証明のみならず、法令遵守のためにも欠かせない工程です。
在留カードを確認する際は、外国人本人のカード原本かどうか、在留期間を過ぎていないか、自社で従事してもらって問題のない在留資格かどうかを慎重に判断しましょう。
偽造カードの提示が発覚した場合、地方出入国在留管理局に相談してみてください。
雇用する外国人の在留資格が適切であれば、企業は不法就労に加担するリスクを避けられるだけでなく、就労意欲を持った優秀な人材の獲得にもつながります。
外国人雇用に関するコンプライアンスを強化し、安全な雇用関係の構築をめざしましょう。